寡父ひとり子供育てし歳月か遠山だけが明るみており
短歌結社の結社誌四月号がきた。
ぱらぱらとめくり自分の歌を探す。
何首か載っていたうちの上記一首について、
選者の花山多佳子さんが選歌後記で取り上げていた。
「寡夫」はあるが「寡父」という言葉はない。「父ひとり」でもいいのでは。
「遠山に日の当りたる枯野かな」を踏んで、何か枯野の心境であることが静かに
提示されている。
確かに「寡父」という言葉はない。
所得税法の控除でも「寡婦（寡夫）控除」である。
しかし、詠草を送るときに書き間違えたのではない。
あえて「寡父」と表記した。
父ひとり子供を育てることがどういうことか、
それは実際、経験してみないと分からないことである。
その思いを表現しようとしたとき、
私はどうしても「寡夫」ではなく「寡父」と表記したかった。
ちなみに、ネットで調べると「寡父」という言葉も幾つか出てくる。
それも市役所のホームページなどの公的なところで。
確かに考えてみると本来「寡夫」という言葉は日本語として微妙におかしい。
「寡」とは、数が少ない、配偶者がいない、という意味である。
「婦人」は成人した女性という意味であり、
従って「寡婦」は、配偶者のいない（失った）成人女性という意味で、
日本語として矛盾はない。
しかし、「寡夫」は、配偶者のいない夫という意味になる。
配偶者がいなければそもそも夫ではないではないか（＾＾；
これと同じ表現にしようとすると、「寡婦」は「寡妻」になってしまう。
なにやら妙である。
もちろんこの場合、死別と離婚では当事者の感じるニュアンスは違うだろう。
死別であれば、夫の心のなかに亡き妻はいるのかもしれず、
「寡夫」という言葉も肯えるだろう。
しかし、離婚の場合は「夫」という言葉すら否定したくなる向きもあるかもしれぬ（＾＾；；
「寡父」ならば配偶者のいない父親という意味になり、
日本語としてまったく矛盾はない。
市のホームページなどの公的なところで使われている「寡父」はほとんどが、
市の税金やひとり親家庭への福祉の案内のところで使われている。
確かにひとり親家庭の福祉ということであれば「寡父」という言葉の方が的確だろうし、
税金においても、「寡夫控除」は扶養している子供がいなければ適用できないのであり、
これも「寡父」の方が実態に合っている。
あるいは、いくつかの市のホームページで使われている「寡父」という言葉は
誤植ではなく、実態を考慮して使われているのかもしれない。
余計なことを書けば、所得税の「寡婦控除」は扶養する子供がいる場合、所得制限は
ないが、「寡夫控除」には所得制限がある。
この取扱いの差異は、終戦後、戦争未亡人の救済のために寡婦控除という制度が作られ、
その後も女性より男性の方が経済力があるという理由で正当化されてきたものだが、
戦争が終わって７０年近く経ち、女性と男性の経済力も往時とはまったく違っている
状況下では、性による差別に該当するというべきである。
この国は税法で性差別をしている。
残念ながそう言わざるを得ない。
女性はえてして性差別というと女性が差別されていることを前提にするのだが、
世の中には性差別を受けている「寡父」が沢山いるのである。
閑話休題、歌の話だった。
花山さん、私はあえて「寡父」にしたのです。
幾星霜子供達を育ててきたやもめ男にとって、
「寡夫」ではなく「寡父」でなければその気持ちを表現できなかったのです（＾＾；；；
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Date: 2012/04/14(土)
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