鯖街道を走り終え、今夜の宿に向かう。祇園祭の宵山で夕方から交通規制が始まる。 愚図愚図していると渋滞にはまるかもしれないので、市街を急いで走り抜け宿に入る。 ビールで喉を潤ししばらく休憩したのち、祇園祭を見に行った。 八坂神社で並べられた神輿を眺め、境内の一隅でやっている奉納の狂言などを見ていると、 周囲がわさわさ動き始めた。なんだと思って振り返ると稚児を先頭にした法被と浴衣姿の 一団が本堂から出てきて、記念撮影をしたあと山門をくぐり四条通りに向かってゆく。 祇園祭についてはよく知らないのだが、あとで調べてみたら稚児が末社回りをするらしい。 人混みに押されながら山門から眺めたら凄かった。 稚児の末社回りに合わせ6時から四条通りは車が入れなくなるのだが、 八坂神社から西に伸びる四条通りがことごとく人で埋まっていた。 こんな京都を見たのは初めて。 境内では明日、石見神楽が奉納される。 京都でなんで石見神楽なんだと思うかもしれないが、 八坂神社の祭神はスサノオノミコトである。 スサノオは出雲の神。 ゆえに石見神楽を奉納する。 夕暮れせまる四条通りを西の方にずーっと歩いていくと、長刀鉾などの大きな 山鉾が道に繋留されているのを見ることが出来る。提灯に灯りがついて綺麗である。 あちこちの屋台でテキトーに食べていたら、それで腹がふくれてしまったので、 あとは缶ビールを飲み、早めに宿に戻って寝る。 鯖街道を走ってきて、少し休んで祇園祭、やはり疲れている。 翌日、宿に頼んで昼過ぎまで車を停めさせてもらい、 朝、東山をぶらぶらしながら三十三間堂まで歩く。30分ぐらいか。 修学旅行以来の三十三間堂を見て、さらに京都駅まで歩き、そこで土産を買って送る。 で、買い物が終わってから今回の旅のもうひとつの目的、三月書房に行く。 三月書房というのは歌集など短歌関係の本をかなり置いている本屋である。 京都まで行って本屋かと思われるかもしれないが、 歌集というのはフツーの本屋にはあまり売っていない。 売っていたとしても一部の有名歌人の歌集だけである。 短歌関係の評論とかになると、探すのは徒労だというくらい売ってない。 京都の三月書房というのは、 そういう滅多にない短歌関係の本をかなり扱っている絶滅危惧種的本屋であり、 歌詠みの間ではかなり有名。 鯖街道を走って京都に行き、ついでに立ち寄って歌集など買ってこようと思っていたのだ。 京都市役所の後ろの方にあるので、京都駅から地下鉄で行くのが一番近いと思うのだが、 また道草食いの心がうずいた。 出かける前、祇園祭について少し調べてきたのだが、 烏丸通りの西側の室町通りや新町通りのあたりで屏風祭りというのをしているらしい。 祇園祭の時期、家で大切にしまっている屏風を並べ、道ゆく人に見て楽しんでもらおうと いうものらしい。それと同じようなものかもしれないが、夕べ、東山を歩いていたときは、 鎧を展示している家が何軒もあった。案内を読むとそのあたりの人は昔から祇園祭の警護 を引き受けていたらしく、祭りの雰囲気を盛り上げるために、警護に使った鎧兜を道ゆく 人に見てもらうのだそうだ。こちらの方はネットなどには紹介されていなかった。 ちょっと遠いかなと思ったが、普段の道草食いの癖で歩くことにする。 烏丸通りをテキトーに北にのぼり、テキトーなところから西に入れば室町通り、新町通り があるはず、という大雑把な感じで歩きはじめる。 しばらくして気が付いた。 今日は暑い(^^; 七月の天気の良い京都を延々と歩くのって覚悟がいる。 ちょっと遠かったかなと思いつつ歩き、テキトーなところで西に入り、 新町通りにぶつかったかなという角で通りの向こうを見ると、 なんだ? あれは山鉾か? 行ってみると確かに山鉾である。 四条通りにある長刀鉾のような大きい鉾より一回り小さい山鉾。 しばらく行った先で新町通りは車両進入禁止になり、出店が出たりしてかなりの人出。 浴衣姿の若い女性なども沢山歩いていて、みな山鉾を見にきている。 通りの建物から仮設の渡り廊下が山鉾にかけられていて、山鉾に乗れるようになっている。 山鉾の向こうにはさらに別の山鉾が停められていて、またさらに向こうにも別の山鉾が ある。つまり、祇園祭で市内を巡行する山鉾は当日までこの新町通りと隣の室町通りに 停められているのだった。長刀鉾のような大きい山鉾は狭い通りには入らないので 四条通りに停めているのだろう。夕べはここまでは歩かず、疲れていたし人も多かった ので、四条通りの長刀鉾などを眺めて引き返したのだった。 ま、その辺のことは前もって祇園祭について調べておけば分かることなのだろうが、 今回は鯖街道がメインで京都に着いたら三月書房で短歌関係の本をまとめ買いしようと 思っていた。祇園祭はこう言ってはなんだが付け足しでそこまで調べなかった(^^;; やっぱり道草は食うものである。 京都駅からまっすぐ地下鉄で三月書房に行っていたら新町通りの山鉾を見られなかった。 道草を食うからいろいろな発見がある。 道草も食えないヤツに一人前の仕事が出来るわけがないという信念をさらに固め、 京都市役所の方へ、 暑い(^^;;; いい加減、道草食い過ぎたかなと思うあたりで、寺町通りにぶつかる。 ここを北へ入ってしばらくいけば三月書房。 小さい本屋である。 フツーの町のなかの、大手本屋に圧迫されてひっそり息をしている古びた小さな本屋を 思い浮かべてもらえれば間違いない。 本屋の主人が座っている脇の書棚が短歌関係であるらしく、確かに結構多い。 感じの良い主人と少し話をし、歌集と評論まとめて二万円くらい買う。 送料はサービスで送ってくれるという。 名刺をくれてメールでも注文受け付けていますからと言っていたが、 やはり本は直接手にとって選びたい。 またいずれ京都に来たら訪ねてまとめ買いしよう。 京阪電車に乗って宿の駐車場に戻り名神高速に乗って横浜に帰る。 途中、大津のサービスエリアで今夜の晩飯に棒寿司を買った。 棒寿司とか鯖棒寿司とかいうが、土産で売っている鯖寿司はたいてい茶色い昆布で ぐるぐる巻きになっている。この昆布の旨味が鯖寿司の味をさらに引き立てるのだが、 鯖街道で食べた鯖寿司に乗っていた白板昆布とは違い、この茶色いぐるぐる巻きの昆布は 食べるとき取って食べる。何を隠そう、初めて鯖寿司を食べたときそれを知らず、茶色の 昆布のついたまま食べて、ちょっと食べにくいなと思ったのである。 ま、昆布と一緒に食べたい人は別にそれでいいし、 実際、昆布と一緒に食べてくださいという鯖寿司もあるらしい。 そう言えば、小浜の街を歩いていたらかなりの老舗らしい古い作りの店で「昆布」と看板 を出している店があった。鯖寿司に使われる昆布も若狭から鯖街道を運ばれたのである。 そして、その昆布を若狭に運んだのは北前船だろう。 北前船のルートは海の街道である。次は北前船のあとを訪ねてみようか。 3日間の鯖街道の旅を終え横浜に帰る。琵琶湖には大きな入道雲が立ち上がっていた。
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Date: 2012/07/24(火)
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