*--Diary--*

--Diary--

▼ 小鉢中鉢 2011/10/25(火)
▼ 釈迦堂切通し 2011/10/24(月)
▼ 『レーニンの墓』　デイヴッド・レムニック 2011/10/22(土)
▼ 推薦 2011/10/17(月)
▼ ニューヨークデモ 2011/10/13(木)
▼ 短歌な一日 2011/10/09(日)
▼ 根津界隈 2011/10/08(土)
▼ 東京平日歌会 2011/10/07(金)
▼ ヴェネツィア展 2011/10/06(木)
▼ 被災地の申告 2011/09/29(木)

小鉢中鉢

日曜の湘南歌会、今回は読み間違えていた歌について（＾＾；
例によって発表前なのでここには出せないが、
朝顔の小鉢中鉢を仕舞った、彼岸花が咲くと秋、というような歌意の歌。
私はその日の歌会の詠草にざっーと目を通したとき、
この歌は朝顔の花が終わったので鉢（植木鉢）を片付けた、というふうに読んでいたのだが、
実は食器の小鉢と中鉢だった。
つまり、秋になったので夏物の朝顔の花の柄の小鉢と中鉢を仕舞った、
そういう歌だったのである。
歌会のなかでの反応によると、植木鉢だと思っていた人がかなりいたようで、
私もそのひとりだったわけである。
確かに、食器にも小鉢・中鉢があり、
植木鉢にも鉢の大きさを示す言い方として小鉢・中鉢がある。
うーん、読み間違えて恥をかいたのはどうでもいいとして（＾＾；；
なぜ、こうもあっけなく誤読をしたのか．．．。
歌会のあとで酒を飲みながら、
「朝顔の小皿大皿」ならすぐ分かったね、などと話していたのだが、
小皿大皿はちとひどいとして、誤読の原因を考えてみた。
やはり、彼岸花が咲いてという下句が、朝顔の花が終わるという連想を引き出してしまい、
植木鉢という読みにつながってしまう気がする。
一首の歌のなかでの言葉の相互作用の問題。
歌のなかでそういうものをうまく使えれば３１文字の世界はさらに広がるのであろうし、
違う方向にその力が作用してしまえば、読みのぶれを生じさせる。
作歌にあたっては、そういう言葉の相互作用も頭に入れておくことのひとつなのであろう。
この歌の場合、下句がうまく作用していない、そんな気がする。
と、自分の読み間違えを棚にあげて、
誤読の原因について考えてみたわけであるが、
ちゃんと食器の小鉢中鉢と読んでいた人もいたわけで、
早い話、一番の原因は読みが安易だったということかな．．．（＾＾；；；

Date: 2011/10/25(火)

釈迦堂切通し

２３日の日曜は久し振りの湘南歌会。
例によって、歌会の前に鎌倉を歩く。
今回は釈迦堂の切通しに行ってみる。
切通しというのは山を削った道で、
前面は海、周囲は山に囲まれた鎌倉は七つの切通しで外と繋がっていた。
防衛上の拠点でもあったわけで、
新田義貞の鎌倉攻めのときはそれぞれの切通しで激しい戦いが繰り広げられた。
今回行った釈迦堂の切通しは鎌倉の外と内とをつなぐ切通しではないので、
鎌倉の七切通しには含まれていないが、
ビジュアル的には鎌倉の切通しのなかでもっとも印象的な切通しである。こんな感じ↓
　　　　　　　　　　　　　http://homepage3.nifty.com/kamakurakikou/asyakado.html
ただ、このネットの写真は現在の姿ではない。
釈迦堂の切通しは昨年、側壁が崩壊し、さらに今年の３月の地震でも崩落があったらしく、
今は完全に通行禁止になっている。
以前も通行禁止の立て看板はあったのだが、
見に来た人は自己責任で切通しをくぐっていたし、浄明寺側と大町をつなぐ生活道路でもあった。
しかし、今はフェンスが作られてまったく通れなくなっている。
昨年の切通しの崩落状況を伝えるのがこちら↓
　　　　　　　　　　　　　http://www.tabioto.com/kmr/2010/05/post_143.html
その後どうなったのか気になっていたので、歌会のついでに出かけることにした。
鎌倉駅から若宮大路を横切り、もう一本東の道に出、そこから東勝寺跡の方へ入る。
滑川を渡ってほんの少し先を右に入ると道は細くなり山に登ってゆく。
行き止まりになりそうな感じのところに車一台がやっと通れるかという細いトンネルがあり、
これを抜けると大町の側に出られる。
観光客は殆ど知らない道である。
別に南側から回り込んで大町の方に行ってもいいのだが、
鎌倉のあまり知られていない道を久し振りに歩きたかった。
静かで感じのよい道である。
大町に出て、しばらく行き川沿いを左に曲がる。一帯は閑静な住宅街。
さらにしばらく行くと釈迦堂切通しの標示があり、
その先をゆるやかに登ってゆけば切通しである。
今回、大町側から来たのは、切通しの大町側は切通しのすぐ近くまで住宅があり、
道が封鎖されていても切通しを望むことは出来るだろうと思ったからである。
しばし行くと、確かに通行止めのフェンスがあった。以前と違い完全に封鎖されている。
ただ、去年の崩落はこの大町側でもあったらしいのだが、
その崩落の跡は片付けられていて、フェンス越しに見る切通しは以前と同じ威容を誇っている。
なにやら不気味でさえある。
フェンスの横の方を見ると山の斜面に続くフェンスの上の有刺鉄線がなぜか一部切れている。
あるいはここからフェンスを越えて入るヤツがいるのか？
切通しそのものを通らなくてもフェンスを越えて藪尾根を少し登れば、
切通しの上に出られそうである。そこに出れば切通しの反対側も見通せるだろう。
山屋としてはたいしたことのない藪尾根で、どうしようかと思ったが、
そこまでして見なくてもいいかと思いやめた（＾＾；
ちなみにこの切通しのうえにはやぐら（鎌倉の墳墓）があり、
遺跡になっているのだが、そこも今は入れないらしい。
この切通しがどうして作られたのかはわからない。
一帯には北条時政の邸があったらしく、
その防備のためであったのかもしれず、鎌倉内部の交通の必要からだったのかもしれない。
大町側から眺めた切通しの上の縁には、昔のやぐらの跡と思われる人為的な窪みがあるので、
やぐらのあった断崖がその後掘られて切通しになったのではないか？
いずれにしても８００年昔にかなり大規模な土木工事をしたわけである。
鎌倉は世界遺産への登録を考えているようなので、
この切通しもなんとかして見られるようにしたいのではなかろうか？
なにしろビジュアルとしては鎌倉随一の切通しである。
しばしフェンスの向こうに暗い大きな口を開けている切通しを眺め、引き返す。
再び、閑静な住宅街を抜け細いトンネルを越えて鎌倉の中心部の方に戻った。
八幡宮で祭礼をやっているらしく、秋空にお囃子の笛と太鼓が聞こえている。
切通しを飽きもせず眺めていたので時間が遅くなった。
この分だと歌会は遅刻である（＾＾；；

Date: 2011/10/24(月)

『レーニンの墓』　デイヴッド・レムニック

７月の東京国際ブックフェアでまとめ買いした本の一冊。
ソビエトが崩壊する数年間に焦点をあて、
多くの取材・インタビューをもとに構成されたドキュメンタリー。
１９９３年にピュリツァー賞を受賞している。
著者のデイヴッド・レムニックはワシントン・ポストの特派員としてソ連崩壊時のモスクワ
で数年間を暮らした。彼はアメリカ人だが、彼のルーツはソ連からの移民である。
共産主義は２０世紀の壮大な実験だった。
そして、その実験が悲惨なものであったことも既に歴史的事実である。
その悲惨のなかにあったソ連の人々の暮らしをこの本は炙り出している。
共産主義がいかに人間性を否定したか、
シベリアの炭鉱で奴隷といっていいような状況で働いていた人々を初め、
緻密な取材によって映し出されたその実像は、読んでいてつらくなってくる。
私はこの本の対象になっているソ連崩壊時のモスクワに行ったことがある。
行ったといってもヨーロッパに行く途中のトランジットで一泊しただけであるが。
そのときの経験を税理士会の支部報に書いた。
トイレのドアも壊れている国際空港。
その空港ビルのなかを群れをなして飛んでいた雀。
乗り継ぎ客の食事のためのレストランでは、前の客の食べ残しが片付けもされずテーブルに
残っていて、ウェイトレス達は隅のテーブルで仕事もせずにお喋りをしていた。
雀達はその食べ残しを食べているのだった。
働く気のなさそうなウェイトレス達を見、空港ビルのなかを飛んでいる雀を見て私は思った。
「まず人が変わらなければ、この国の改革は成功しない」
改革が失敗したとき、この国にファシズムが台頭するのではないか、
そういう漠然とした恐怖を覚えたと支部報に書いた。
あれから２０年経ち、あのときの漠然とした不安は半分くらい現実化したらしい。
ソ連崩壊後の資源価格の高騰はロシアにとって幸運だった。
ロシアの経済は多分にそれで救われたわけだが、
その一方、混乱のなかから富と権力を得たのは、
ＫＧＢ出身者等の旧体制のテクノクラート達だった。
ロシアの民主主義は間違いなく後退した。
『レーニンの墓』を読んだとき、
改革の行方が歪み、ロシアの民主主義が後退することが、
この国の実像からすれば必然であったような気がしてくる。
著者は情緒に流されることなく、そういうロシアの姿を映し出した。
読み応えのある一冊である。

Date: 2011/10/22(土)

推薦

所属している短歌結社では会員は選者も含めそれぞれ、
月集・作品１・作品２・若葉集のいずれかの欄に属することになっている。
入会して最初の一年が若葉集。
その後、作品２に移り、
そこからさらに作品１、月集へと昇欄してゆく。
で、結社からその昇欄の推薦についての書状が来た。
今年から作品１になったのだが、
それぞれの欄からの昇欄は、
年に一度、月集と作品１の会員が推薦した人のなかから選者会が選ぶらしいので、
こういうふうに年に一度、推薦の書状が来るわけである。
書状を読むと推薦の基準は、
　①　結社へ入会後ほぼ七年以上経っていること
　②　毎月の結社誌にできるだけ欠詠がないこと
　③　作品の質が充分に高いこと
の三点となっている。
ちなみに、月集と作品１の会員数が記載されていて、
月集は６１名、作品１の会員は１６０名だそうだ。
数えたことがなかったので、へぇ～と思った。
さらに作品２と若葉集の会員がいるわけだから、大所帯になったものだ。
どうりで、毎月の誌面のページが増えて読みきれなくなったはずである。
で、その推薦。
考えた末に二人ほど推薦した。
候補は４人だったのだが、
７年前の名簿を引っ張り出して見てみると、そのうち二人は載っていなかった。
つまりまだ７年経っていないということ。
ただ、今回始めて推薦してみて気が付いたのだが、
７年前の名簿で必要年数が経っているかどうか判断するというのは、
人によっては一年のタイムラグが生じる。
名簿は９月３０日現在となっているから、
７年前の９月に入会した人は載っているが、
１０月に入会した人が載るのは翌年の名簿。
つまり１０月入会者は名簿で調べていると推薦対象になるのは、
実質的に８年経ってからということになる。
昇欄は１月からだから、１０月に入会した人も昇欄の時点では７年経っているのだが、
名簿を見たとき、まだ年数が足りないのかということで推薦に洩れてしまうという例もありそうだ。
ひょっとしたら、今回、私が年数が足りないということで推薦しなかった人の中にも、
そういう人がいるのかもしれない。
７年前の誌面を調べて歌が出ているかどうか確認すればそういう人もひろえるわけだが、
そこまでするのも面倒なのでやらなかった（＾＾；
ま、私も１０月入会だから、
同じ１０月組の私がそこまでやらなくても勘弁してはもらえるだろう（＾＾；；
力のある人は放っといてもいずれ昇欄するはず。
今回、推薦した二人はいずれも私より実力のある人。
人によっては実力があるのにあまり注目されていないということもあるわけで、
そういう人を見つけ出すということも結社にとって大切なことであろう。

Date: 2011/10/17(月)

ニューヨークデモ

ニューヨークでデモが続いている。
貧富の格差拡大に対する不満、若者の高失業率が、その原因で、
格差の是正、富裕層への課税強化を求めている。
ロンドンであった暴動は背景のひとつに多文化社会の危機という側面もありそうで、
ふたつを安易に比較することは出来ないが、
両者に共通しているのは若者の高失業率である。
今、世界的に若者の失業率は高くなっている。
アラブの春の背景にも国によって異なるが４０％ともいわれる高失業率がある。
日本はどうなのか？
日本の若者の失業率は８％～９％ぐらいという話もあるが、
この辺は統計のトリックもあるわけで、
ハローワークに行って求職している人のうち就職できない人の割合で計算するので、
ハローワークに行かずに仕事を探している若者や、諦めてフリーターをしている若者は含まない。
実態としての若者の失業率は日本も１０％台なのではないか？
ニューヨークのデモは平和的におこなわれているが、
デモがなんの成果ももたらさず若者の間に失望が広がったとき、どうなるのだろう？
ロンドンのような暴動が起きないという保証はない。
今後、どうなるのであろう？
仮に富裕層への課税が強化され、それを財源に失業者への給付が増えたとしても、
それは根本的な解決にはならない。
投機的な金融に制限を加え、それによる経済の混乱や、一握りの投機家達の馬鹿げた金儲けを
排除することが出来たとしても、それもやはり根本的な解決ではあるまい。
問題は「仕事」ではないのか？
しかし、仕事は低賃金の国に行ってしまっている。
今後、アメリカ人、特に若者達の中国への眼差しは厳しいものになっていくのかもしれない。
それはいずれアメリカの政策に反映するのだろう。
低賃金、低コストを求めるのは資本主義の当然である。
しかし、その結果、自分達の国の若者達を失業させ、
その帰結として、自分達の国の購買力を低下させればどうなるのか？
足下の市場を自分達で崩壊させているのが現代の資本主義だとすれば、
これは最早、異形の資本主義である。
日本もそうだ。
若者の雇用の場を奪い、派遣という不安定な生活を強いて、その社会に未来はあるのか？
それは本当に企業や社会の利益に繋がるのか？
かって、プラハの春は、人間の顔をした社会主義を標榜した。
社会主義の失敗が既に歴史上のものとなったいま、
模索しなければならないのは、「人間の顔をした資本主義」であろう。

Date: 2011/10/13(木)

短歌な一日

今年の五月あたりから歌会の回数を減らした。
いかんせん時間に追われ、歌を作る時間がないので、
月に３度行っていた歌会を月１回にすれば歌を作る時間がとれるかと思ったのである。
ところが、人間のやることはそう計算通りにはいかないもので、
歌会に行っていた月２回の日にちを空ければ歌を作っているかといえばそうではなく、
結局、違う用事で時間をつぶしてしまったりするのである。
で、歌はやはり作れない。
これではいかんと思った。
以前、選者派遣で横浜歌会にやってきた池本一郎さんも言っていたが、
「歌は強いて作るところがある」
短歌を始めた頃はなにがしか表現したいことがあって始めるので、次々と歌が
湧いてくるわけだが、何年か経つとそれが尽きる。
たぶん、それからが勝負なのだ。
それまでと同じように作っている人はここで大きな壁にぶつかる。
結社に入って誌面を読んでいると、いい歌を詠んでいた人がいつのまにか消えている。
たぶん皆、この壁にぶつかって消える。
この壁を突き抜けるためには「強いて作らねば」ならない。
んで、月に一度か二度「短歌な一日」を作ることにした。
その日はともかく短歌を作る。
さあ、歌を作るぞと自分に言い聞かせ、なにか歌の題材がないかと周囲に目をやる。
いいアウトプットをするにはいいインプットが必要である。
だから、「短歌な一日」はどこかに出かける。
街を歩いたりして歌の題材を探す。
昨日、根津のあたりを歩きに行ったのも実はこの「短歌な一日」で歩きに行ったのだ。
とりあえず何首かの歌が出来た。
いずれもしばらく寝かせて推敲してからでなければ誌面には出せないような
ものばかりで、歌というより歌の材料のようなものであるが、
それでも１日で何首か出来れば「短歌な一日」も無駄ではない気がする。
そのとき思ったのは、昨年亡くなられた河野裕子さんは一年３６５日、「短歌な一日」
だったのだろうな、ということ。
自らをそこまで強いて歌に真向うことが出来る。
それ自体が尋常ではなしえないことである。
さて、それはそれとして、三連休二日目の今日は、
通っているアーチェリーの射場の４０周年記念の射会。
昼飯は手巻き寿司がサービスで出るらしい。
よく働くためにはよく学びよく遊ばなければならぬ。
いいアウトプットをするためにはいいインプットが必要。
ということで、これから支度をして出かける。

Date: 2011/10/09(日)

根津界隈

三連休初日、根津のあたりを歩いてきた。
横浜から乗り継いで地下鉄千代田線の根津。
この辺は昔ながらの路地が結構残っていて、
歩いていると、なんとなくそういう路地に迷い込みたくなる。
そういう狭い路地の町で生まれた人間なので、なにやら懐かしくなってしまうのだ。
言問い通りを歩いているつもりが、地下鉄の駅というのは出口を間違えるととんでもない
ところに出るもので、しばし迷って根津神社への入り口を見つける。
道の左に金太郎飴の店があったりして、金太郎飴だけで商売が成立するのかと
余計な心配をしてしまう。
根津神社は都会の真ん中であるが由緒を感じさせる神社である。
なかなか雰囲気がいい。
丁度、神前で結婚式をやっていた。天気も良く、いい門出であろう。
神社の左手には奉納の赤い鳥居が続いている。
京都にもそんなところがあったが、
この延々と続く赤い鳥居をくぐっていくのはなんともいえない気分がするものである。
日常から非日常へ続く道。
鳥居の意味が理屈ではなく感覚として分かってくる気がする。
根津神社を出て、昔の路地が少し進化したようなくねくねとした道を歩く。
たぶんこっちだと見当をつけて行く。
曲がったところに階段が出てくる、これがお化け階段。
数えると上りと下りで階段の段数が違うというので、お化け階段と名づけられた。
しかし、階段の構造からして上りも下りも段数は同じである。
両手に余る数は数えられないヤツかあるいは酔っ払いが、お化け階段と
言い出したのであろう。
ただ、この階段、実際に歩いてみると気付くのだが、
ところどころ段差が他と違うところがある。
人間、同じ段差のつもりで登るので、登っていて何回か、あれっ？と違和感を
覚えるのである。
あるいはそれが、お化け階段の本当の謂れかもしれない。
この先を行くと異人坂がある。明治の時代、この坂の上に東京大学のお雇い外国人教師の
官舎があったので、こう名づけられた。坂の脇に大きな桐の木が立っている。
行きたいところがあって、ここを下るのだが、場所が分からなくなった。
仕方なく人に聞いたりしてようやく辿り着いた。
札幌旅館。
昔、大学受験のために東京に出てきたとき友人と一週間泊り込んだのだ。
はっきりとは覚えていないのだが、東京で札幌とはこれいかにとかいう話を友人と
していた気がする。安宿で、そこに泊り込んで何箇所かの大学を受け、
高校生のくせに店で酒を買ってきては毎晩晩酌をしていた。
今にして思えばしょうもない受験生だったわけで、
そんなことをしていたから、第一志望の早稲田の政経に落ちたのであろう（＾＾；
人に聞いてやっと辿り着いた札幌旅館は蔦に覆われた廃墟のような建物だった。↓
http://akatonbo-jo.cocolog-nifty.com/photos/nezuyanaka/20092yanaka_086.html
今は営業していないようだ。
横を見るとさっき異人坂から眺めた桐の木がある。
行ってみると、異人坂から分かれて上に登る道に入ればすぐに札幌旅館なのだった。
ぶちのネコがのんびりと昼寝していた。
確か４ヵ所くらい受験したのだが、どこかの試験が終わって帰ってくるたびに、
坂の途中にあった数人しか座れないようなラーメン屋でラーメンを食べて宿屋に帰った。
たぶん、その坂は言問い通りの弥生坂なのだが、今は大きな建物が建っていて、
そんなしがないラーメン屋があった感じなど微塵もない。
思えば３分の１世紀前の話なのだ。
受験生であった頃に歩いたはずの道を歩き言問い通りに戻る。
ここから暗闇坂を経て忍ばずに向う。
道の右側は東京大学で安田講堂が見える。
竹久夢二の美術館などがあるのだが、今日はパス。
上野の忍ばずの池にぶつかったところで右に折れ、御徒町の方へ行く。
途中、ついでに無縁坂を歩いたりして池之端へ。
忍ばずの池の通りから一本入った、ちょっといかがわしい感じもある通り、
ここに池之端藪がある。
神田藪、並木藪と並んで薮蕎麦の御三家。
東京の下町歩きを楽しむのは東京平日歌会のときということにしているのだが、
平日歌会は水曜、水曜は池之端藪の定休日。
上野に来てもここの蕎麦は食えず、上野藪に行ったりするわけである。
今日は土曜、やっているはず。
あった、しかも、行列がない！
以前、所要あって上野に来たときに立ち寄ったのだが、
そのときはしっかり行列していた。
今日はついてる。
中に入ると、結構席は埋まっているがテーブル席があいている。
座って、天ざるとビールを注文。
注文を奥に伝える店員さんの声がきびきびとして気持ちがいい。
蕎麦味噌を舐めながらビールを飲んでいると、天ざるがきた。
蕎麦はうすい色で、天ぷらは海老のかき揚げ。
天ぷらをつまみにビールを飲み終えて、蕎麦を食べる。
浅草の並木藪もそうだが、汁は鰹の香りが馥郁とする。
こうでなくてはならぬ。
あちこち蕎麦を食べていると、蕎麦は美味しいのに、汁が市販の汁みたいだったり、
なにやら甘かったり、結構そういうのが多い。池之端も並木も汁がいい。
天ぷらはどうだろう、正直言って並木の方が旨いかな。
汁も並木の辛い汁の方が好みなのだが、
蕎麦自体は池之端の方が旨いような気がした。
ただし、量が少ない（＾＾；；
満足して勘定を済ませ御徒町の駅に向う。
しばしアメ横を歩けばすぐに御徒町である。

Date: 2011/10/08(土)

東京平日歌会

東京平日歌会、今回は選者の栗木京子さんが出席し、参加者も２５人。
歌会の適正人数は２０人あたりで、２５人になってしまうと、
かなり時間に追われる。いきおい発言も遠慮することになる。
で、例によって気になった歌を。
発表前なのでここには出せないが、
千枚通しを使うとこれで自殺しようと泣いていた正岡子規のことが思われる、
そんな歌意の歌である。
私はこの歌について指名されたとき、
下句をもう少しなんとかしたいという事を言った。
会場では私の意見は少数派であったらしく、
下句はこのままでいい。面白さがある。千枚通しなんて小さいもので
自殺しようと大の男が泣いていた、子規の姿が浮かんで面白い。
そういう意見が主流だったようだ。
私はそれを聞いて内心「えっ！？」と思った。
これは子規の晩年ではないのか？
わずか３５歳の若さで脊椎カリエスで死んだ正岡子規。
脊椎カリエスで体に穴が開き、そこから拭き取っても拭き取っても膿が出てくる。
その膿がこびりつき、母と妹のリツが包帯を替えるとき、子規は激痛で泣き叫んだという。
その苦しさに耐えかねて、ある時、子規は枕元にあった千枚通しで自殺することを考える。
しかし、結局、恐ろしくて死ぬことが出来ない。
子規が死ぬ数ヶ月前のことである。
この歌に詠われているのは悲惨な晩年の子規である。
そういう凄惨な場面で子規は泣いていたのであって、
千枚通しのような小さいもので死のうと大の男が滑稽に泣いていたのではない。
そういう歌の背景に目をやったとき、
私は「面白い」という批評を諾うことは出来なかった。
そういう悲惨な子規の晩年であるから、
それを表現するにはもうちょっと違う表現に出来ないかと私は思ったのである。
同じ作者のもうひとつの詠草は、「ちちぽぽ」というオノマトペを使ったもの。
（東京平日歌会は詠草を二首出す）私はこの歌にたいして、
「ちちぽぽと飛ぶ虫というのはどういう虫？」とコメントしたのだが、
こちらも歌会での主流の意見は「ちちぽぽ」というオノマトペが面白いというものだった。
歌会で意見が一致しないのは当たり前で、
むしろ簡単に一致してしまうようではつまらないし、
試験の答えのように一番正解の読みを出そうというわけでもないから一致しなくていい。
読者それぞれの読み、鑑賞があるのでその辺はどうでもいいのだが、
正直、私はこの「ちちぽぽ」についても首を傾げた。
ちなみに、帰ってから調べてみると、俳句のアンソロジーにあった。
　　　　ちちぽぽと鼓打たうよ花月夜　　／　松本たかし
あるいはこのアンソロジーからとったのかもしれないが、
俳句の方は聴覚のオノマトペである。これはすんなりと分かる。
しかし、歌の方は「ちちぽぽと虫が飛ぶ」という視覚のオノマトペである。
私は「ちちぽぽと飛んでいる虫」というのをクリアな映像として思い浮かべることが
出来なかったのである。しかも「ちちぽぽちちぽぽ」と二回繰り返している。その必要性は？
だから、虫の名前を出したら？　とコメントした。
もっとも、「ちちぽぽ」と飛ぶ虫はたぶん小さな虫だと思うわけで、
名前を出したくても名も知らぬ虫ということもあるだろう。
それならそれで、なにかそういう詠い方はないか？
このままでは少し漠然としているのではないか？　私はそう考えた。
俳句のアンソロジーにあるので、俳句の世界ではこのオノマトペは使われるらしく、
調べてみたらこういう俳句も出てきた。
　　　　ちちぽぽと角がものいふ蝸牛
これは視覚のオノマトペとして使われている。
しかし、蝸牛という具体があるので、葉っぱの上で角を動かしている姿が
なんとなく浮かぶ気はするわけである。
蚊柱や飛蚊症を思い浮かべてもいいという意見もあったが、
夕べの道の辺の蚊柱は「ちちぽぽ」とは立っていないし、
友人に言わせれば白い紙にざわざわと見えてくるという飛蚊症も「ちちぽぽ」は
似合いそうにない。
歌会でのふたつの歌の批評に共通していたのは表現の「面白さ」だった。
確かに、大の男が千枚通しのような小さいもので自殺しようとして泣いているのは、
表現としては面白い。
しかし、その背景に目をやったとき、私は面白いとは思えなかった。
確かに、「ちちぽぽ」というオノマトペは面白い。
しかし、出された歌の表現でクリアな映像を浮かべることが出来るのか私は疑問だった。
もちろん、ここで言う「面白さ」というのは「表現の工夫」ということなのだが、
「表現の工夫」の「面白さ」に着目するのはいいとして、
そこで批評が止まってしまっていないか？
そこからさらに進んで歌の背景に目をやることは大切ではないだろうか？
そこからさらに進んで面白いオノマトペが生きているかどうか、それはどうなのか？
人数が多く時間がないので黙っていたが、それが気になった歌会ではあった。
念のために書くが、
歌会は歌を批評する場であって、批評を批評する場ではない。
私がこうやって歌会で出された批評についてブログに書くのは、
歌会とは別の場で歌会の内容を反芻することで、
自分の歌作の力をより高めたいと思うからであって、
それ以外の意味はない。

Date: 2011/10/07(金)

ヴェネツィア展

５日は東京平日歌会、ついでにいつものように東京の下町歩きをしようと思ったが、雨。
雨のときは屋内ということで両国の江戸東京博物館に行く。
世界遺産ヴェネツィア展をやっている。→　http://www.go-venezia.com/
両国に行く前に東京駅に立ち寄る。
先月の平日歌会のときに探そうと思った東京駅の蕎麦屋「あずま」、
先月は時間切れで探せなかったので探してみた。
昨年亡くなられた歌人河野裕子さんが、
雑誌の仕事等で東京に来る度に蕎麦を食べるのを楽しみにしていたという蕎麦屋である。
先月、ネットで探していたら、山の手線の駅の蕎麦屋を食べ歩くというＨＰがあり、
そこに「あずま」が載っていた。それでだいたいの場所は分かったのだが、
その記事自体、だいぶ前のもののようだった。
来る前にネットで東京駅のエキナカの店を紹介するページがあったので見てみたが、
それらしい店はなかった。
あるいはもう閉店して他の店に変わっているかもしれないと思いつつ行ってみた。
やはりなかった。
たぶん、もう閉店したのだろう。
裕子さんが「ここの蕎麦は美味しい」と言っていたエキナカの蕎麦屋はなくなってしまったようだ。
ちょっと残念。
ついでに東京駅で今日の歌会のお茶菓子を調達。
歌会のお茶菓子は出席者が交代で買ってくることになっている。
東京駅はいろいろな土産を売っているので、こういうとき便利である。
さて、世界遺産ヴェネツィア展。
人によって違うだろうが私はヴェネツィアといえば塩野七生が浮かぶ。
ヴェネツィア共和国千年の歴史を書いた『海の都の物語』は塩野七生の代表作のひとつである。
その後、『ローマ人の物語』を書き、今は十字軍について書いているが、
塩野七生の著作は、『海の都の物語』や『ロードス島攻防記』『レパントの海戦』のような、
前期のものの方が生き生きとしている。
展示されている地図、絵画、ドージェ（総督）の衣装等を見ていると、
塩野七生の本で読んだ世界がまざまざと浮かび上がってくる。
たぶん、この展覧会は塩野七生を読んでいる人といない人では鑑賞が変わってくるだろう。
しばし、若い頃に読んだ本の世界と目の前の展示をだぶらせ、会場を出る。外は雨。
ここから両国橋を渡れば歌会の会場である。

Date: 2011/10/06(木)

被災地の申告

税務署に行ったついでに法人税の申告書用紙をもらおうとした。
「法人税の申告書用紙ないんです」
「えっ？　なんで？」
「震災の関係で、それぞれの会社に送る分だけは間に合ったんですが、
税務署への在庫分まで回らなくて送られてこなかったんです。月末には来る予定です」
そうか、そういえば震災で被災地の申告等はストップ。
申告どころではなかったわけで、申告期限ももちろん延長された。
その為、税務署は被災３県の会社への法人税申告書用紙の送付もストップさせていたのだが、
その後、延長期限が９／３０に指定され、それに伴って、被災３件への法人税申告書用紙の
送付が再開されたのだった。
震災の関係というのはおそらくそのことだろう。
申告用紙送付の再開でストックを使ったのだろうし、手間もかかったのかもしれない。
実際、震災の被災地では税務署員も被災しており、
他の地域から応援に行ったりしているらしい。
ちなみに、三陸沿岸の被害の大きかった地域は今回の延長期限指定の地域に入っておらず、
申告期限はまだ延長されたままである。
遅れていた申告をこれからしなければならないという法人や個人が、
被災地にはまだ沢山いるのかもしれない。
津波で資料は散逸しているかもしれず、さぞかし大変だろう。
こういうときは我々税理士もそういう納税者のために手伝いに行ってもいい気がするが、
税理士会からはそういう話はない。
税理士の社会的地位を云々するのならば、
こういう時、もう少し積極的な姿勢があってもいいと思うのだが．．．。

Date: 2011/09/29(木)

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