バンコクに戻る車中、体の具合が少し変だった。 疲れが出たのかだるくて日陰に座っているのに額のあたりがなにやら火照っている。 日差しの強い遺跡を歩き回って、あるいは少し熱中症っぽい感じ? 水分不足かもしれないのでペットボトルの水をがぶがふと飲む。 フアランポーンの駅についても、やはり疲れが消えないので子供達と相談して、 とりあえずホテルに帰って休むことにした。 ホントは前もって調べてあったレストランに行って食事をしてからホテルに帰るつもりで いたのだが、仕方ない。駅からタクシーに乗り、ホテルへ。 ホテル名を言っても分からないかもしれないので、 ナショナルスタジアムステーションの近くだと言う。 ところがこのタクシーの運ちゃん、他の場所と勘違いしていたらしく、 途中で車を停めて他のタクシーの運転手に聞いたりしている。 なんでも似たような名前のホテルがあるのである。 だから、ナショナルスタジアムステーションの近くだと言っているのだが...。 疲れているのでいささか苛立って、 「そっちじゃないよ。ナショナルスタジアムステーションの近くのホテルだ!」 と日本語で怒鳴る。 「OK、OK」とか言いながら走り出す。一応、メーターを使っている。 しかし、昨日今日走ってない道をゆく。高速道路みたいなところを走って都心の方へ。 どうも変なので途中で低い声で、 「Where am I?」と聞くと、 小さな声で「ヒダリ ヒダリ」と言って左を指差し左に曲がる。 しばらく直進を続けるので再び低い声で聞く。 「Where are you going?」 するとまた小さな声で「ヒダリ ヒダリ」と言って左を指差し左に曲がる。 つまり、フアランポーンから北へ行けばいいものを一度東にゆき北上し、それで西にゆく。 メーターを使っているので、ぼったくるためにはぐるりと大回りをしなければならない のである。くだんの運転手、決して悪人の顔をしていない。小柄な男で自分の口を指差し、 「ニホンゴ スコシ ハナセナイ」とか言う。 ここはどこだ、どこへ行くとか聞かれて、大回りしていることに気付かれたと思った のだろう。あそこは〇△ホテルだとか一生懸命説明してくれる。 変なところに連れて行こうというわけではなく、少しでも稼ぐために大回りしている のだと分かって、なにやら逆におかしくなってしまった。 大回りしているうちに、タクシーの冷房のおかげで軽い熱中症のような症状だったのが 消えて元気が出てきた。元気になったので最初の予定通りレストランで食事をすることに。 ちょうどセヤムステーションに差し掛かったので、そこでおろしてもらう。 メーターは91バーツ。稼ぐために一生懸命大回りしたのである。 40〜50バーツのぼったくりも彼等にとっては貴重な金なのだろう。 サンキュー、おまえが大回りしてくれたおかげで体がクールダウンして元気になった。 100バーツ札を出して9バーツはチップにくれてやる。 大回りしていることに気付いてなおチップをくれた日本人に、小柄なぼったくり運ちゃん はタイ式に両手を合わせ、今までの運転手の中で一番丁寧に挨拶をした。 調べてあったレストランはセヤムの隣り駅のあたり、歩いてゆける。 なんでも地上17階のテラスからバンコクの夜景を眺めて食事が出来るとかで、 娘が調べて楽しみにしていたのだ。 行ってみると、高そうなところである。 予約をしていないが入れるかと聞くと大丈夫だった。 期待していたテラス席に案内される。 なるほど夜景が綺麗だ。 100万ドルとはいかないが100万バーツぐらいの夜景ではある。 まずはビール。 明日は昼過ぎの飛行機で帰国する。短い二泊三日のタイ旅行最後の夜。 それにしても、ぼったくられる国である。 バンコクのタクシーの運転手は倍くらいぼったくるのは当たり前みたいだし、 アユタヤのトゥクトゥクはうっかりして相場の3倍でOKしてしまった。 エレファントヴィレッジの可愛い女の子はつぶらな瞳で相場の倍ふっかけてきた。 ただ、正直あまり腹がたたない。 タクシーの運転手に100バーツぼったくられても300円である。 その金が彼等には貴重なのかもしれず、目くじら立てる気にならない。 アユタヤのトゥクトゥクと象乗りにしても、帰国してから調べたら、 我々が行ったのと全く同じコース、ローカル電車で行く現地発ツアーというのがあり、 それは1人1700バーツだった。3人で5100バーツというのは、我々がアユタヤで 使った金とたいして変わらない。しかもそちらは象に乗るのは10分だけとなっていたか ら、トゥクトゥクで3倍ぼったくられても実質的に我々の方が安い。 つまり、ぼったくられても大した金額ではないのである。 結局、頭のすみにそういう貨幣価値の計算があって、 たいした金額じゃないよ、気にしなくていいよ、という気にはなるわけである。 それに、定価のない国で価格交渉は当たり前で、 うっかり言い値でOKするヤツがアホなのである。 あのトゥクトゥクの運転手もあの女の子も最後のタクシーの運転手も悪人という気は しなかった。 で、帰ってきてから調べてみて分かったのだが、 本当の悪人というか今回のタイ旅行の一番の危機は、最初の日、 ホテルからワット・ポーに行ったときに乗ったタクシーの運転手であったらしい。 あの男の言っていた「すぐそばの水上マーケット」を調べてみたら、 確かに、バンコクから近いところにひとつ水上マーケットはある。 しかし、そこは週末しか開いていない。 我々が行ったのは金曜で、平日もやっている水上マーケットはバンコクから 片道80Kある。 ネットで調べるといろいろなトラブルはあるらしく、タクシーに乗ったら宝石店に 連れていかれ、買うまで出してもらえなかったとか、そういうこともあるらしい。 いずれにせよ、8時からのワット・ポーを9時にならないと開かないと言い、 片道80kの水上マーケットをすぐそばだと言う運転手の言葉を信じてそのまま 行っていたら、なにが待ち構えていたのか分からん。 だから個人タクシーは使わずにタクシー会社のものを使えとガイドブックに書いてあった が、我々が乗ったのはホテルに出入りできるタクシー会社のタクシーだった。 一番大切なのは下調べして情報をしっかり身につけて行くことと、 そういう場面での断固とした態度なのだろう。 それを怠らなければ東南アジアは楽しめる。面白いところだ。 子供達には旅をして欲しい。 観光旅行ではなく、旅である。 旅は人を育てる。そういう旅をして欲しい。 二泊三日の家族での短いタイ旅行がいい経験になってくれたらいい。 それにしても夜景が綺麗だ。 食事も美味い。 高級だというだけあって雰囲気もいい。 ビールをカクテルに変え、しめて4000バーツ。 ここの食事代がぼったくられているのかどうかは知らない(^^ 見上げると夜空には日本のそれとは少し角度の違うオリオンがあった。
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Date: 2013/04/05(金)
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