*--Diary--*

--Diary--

▼ 鎌倉飯店 2010/07/27(火)
▼ 比企一族の谷 2010/07/26(月)
▼ バーベキュー 2010/07/22(木)
▼ 横浜－巨人戦 2010/07/20(火)
▼ 訃報 2010/07/14(水)
▼ はやぶさの光芒 2010/07/13(火)
▼ 東京平日歌会 2010/07/10(土)
▼ 入谷朝顔市 2010/07/08(木)
▼ 歌合 2010/07/06(火)
▼ 顔を覚える 2010/07/02(金)

妙本寺を出て正面に見える本覚寺の境内を抜け、若宮大路に戻る。
ちなみにこの本覚寺の百日紅は見事である。
若宮大路をそのまま鶴岡八幡の方に行く。
今日はもうひとつ目的がある。
鎌倉飯店に行きたいのである。
八幡宮の鳥居のすぐ前という好立地にありながら、
外見はどう見ても場末のラーメン屋、中に入ってもやはり場末のラーメン屋なのだが、
放浪の歌人、山崎方代の世話をした根岸侊雄の店である。
店の古い木の品書きは方代が世話になった礼に書いたものであるらしく、
方代の歌や方代の故郷である右左口村の航空写真などが飾ってあった。
今年の四月、湘南歌会の日の午前中に鎌倉を歩いていて店が閉まっていることに気がついた。
それまでは昼は開いていて、何度かここで昼飯を食べて歌会に行った。
五月に湘南歌会で鎌倉吟行をしたときもやはり閉まっていて、気になっていたのだ。
あるいはつぶれたのか？
そう言えば、昼飯時に入っても殆ど客がいなかった。
餃子にしろ炒飯にしろ使っている油がいまいちで、いかにも田舎のラーメン屋の味なのだが、
方代さんもこの店で好きな酒に酔ってラーメンを啜りながら歌を作っていたのかもしれないと
思うと、捨てがたい店であった。
その店がつぶれたのかもしれないと思うとやはり気になるので、それを確かめに来たのだ。
八幡宮の鳥居の前、看板は相変わらず出ているのだが、行ってみると店は閉まっていた。
閉店しましたというような張り紙もなにもない。
四月以降だとしてももう３カ月以上経っている。
もし閉店したのなら、もう別の店に変わっていそうなものである。
あるいは昼は営業せず夜だけの営業に変わったのか？
おやじさんももう結構な歳のはずである。やはり閉店か？
うーん．．．。
いつまでも閉まっているラーメン屋の前に立っているとバカみたいだ。
隣の店の人にでも聞いてみればすぐ分かるのだろうが、
別にそこまでせんでもいいかと思い店をあとにした。

　　　めずらしく晴れたる冬の朝なり手広の富士においとま申す

手広とは根岸侊雄の自宅のあったところで、
その庭先にプレハブを建ててもらい方代はそこに住んでいた。
方代の歌の通りだ。
時がたてばみなそうやっておいとましていくのである。
こだわることはない。聞かなくてもいい。
信号を渡り若宮大路を駅に戻る。そろそろ湘南歌会に行く時間だ。

Date: 2010/07/27(火)

比企一族の谷

鎌倉駅の東口を出て若宮大路を渡り、ほんの少し南に行ったところで左折、
細い道をゆき突き当たりを右に入り、滑川を渡るとそこが比企谷（ひきがやつ）である。
比企一族の館があったところであり、１２０３年、比企一族が滅ぼされた後、
比企能員の子でただひとり生き残った能本が法華堂を建て、それが妙本寺になった。
能本は一族が滅ぼされたとき、二歳だった。
なにも分からないままに孤児となったのであろう能本は、
その後出家して京にのぼり天皇に遣えたと言われているが、
腰越に邸を持っていた比企高家が能本と同一人であるという説もあり、真偽は分からない。
日蓮に帰依して、それで妙本寺は日蓮宗の寺になったらしいが、
能本が出家したときまだ日蓮は生れていないので、
一族が滅びたあと出家させられ、その後還俗したのかもしれない。
彼が比企の谷に法華堂を建てたのは、
同じ比企の血を引き、四代将軍藤原頼経の夫人となり難産で死んだ姪の竹御所の菩提を弔う
ためであったが、かって一族が住んでいた比企の谷をその場所に選んだのは、
竹御所だけでなく一族の菩提を弔うためでもあったのだろう。
惣門をくぐると参道の両側に普通の民家が並んでいる。
京都でも見かけるが、大きな寺が敷地の一部を切り売りして寺の敷地内に普通の民家が
並んでいる、そういう感じ。
参道はその奥の森の中に続いている。
静かな寺である。
二天門は工事中でくぐれず、脇から祖師堂の方にゆく。
二天門の後には鮮やかな凌霄花が咲いていて、その向こうに幾つかの墓がある。
比企一族とともに殺された頼家の子一幡の墓、その左の方に比企一族の墓。
鎌倉らしい谷の奥の苔むした空間である。
鎌倉時代の豪族の邸は北条氏のそれも同じであるが、防衛上の目的から谷に作られている。
森が迫り、崖に突き当たる谷奥の邸や寺。
その暗さが鎌倉らしい風景のひとつになっているわけだが、
京から来た公家達は鎌倉のこの暗さに、明るい京とは異質なものを感じただろう。
比企一族は武蔵の国の比企郡のあたりの豪族だった。
頼朝が伊豆に流されていたとき、比企の尼がその面倒を見、
その関係で鎌倉幕府草創期、比企一族は大きな権勢を握った。
しかし、８００年前、勢力争いの末にこの谷で滅ぼされた。
頼家の息子一幡が残したのは焼け焦げた袖の端だけである。
阿鼻叫喚に包まれた谷は今は静かな寺域になっている。
それにしても静かだ。
北条氏最後の地である東勝寺跡も静かな場所だったが、
そことはまた異質である。
なにか冷たいものを感じる静けさである。
他に観光客でもいればまた違う印象があったのかもしれないが、
ひと気のない谷の奥の寺は、死者の領域にあるような気さえしてくる。
その静けさを背に参道をくだる、道の左は深い森になっている。
惣門を再びくぐり街に戻ったとき、
異質な世界をくぐり抜けてきたようで少しホッとした。

Date: 2010/07/26(月)

バーベキュー

１９日の月曜（海の日）は、
首を突っ込んでいるＮＰＯで一年に一度やっているバーベキュー、場所は海の公園。
この時期、暑いのだが、なぜか毎年恒例で７月なのである。
今回で参加するのは四回目くらいだろうか、
以前は三浦の方の海岸でしたこともある。
老若取り合わせて２０人くらい。
ＮＰＯのメンバーではないのだが、
メンバーの馴染みのスナックのママとそこのホステス二人も来ていた。
ママはここ数年連続して参加しているが、ホステスは毎年変わる。
ま、入れ替わりの激しい世界だから当然と言えば当然。
今年はフィリピン人のホステスと日本人のホステスである。
ちなみにママもフィリピン人。
彼女達は立派である。
家族を国に置いて、言葉も通じない外国に働きにくる。
日本に来て数ヶ月で片言ながら日本語を話すようになる。
それを考えると、日本の学校の中学高校六年間英語を勉強して、
それで話せるようになる人間があまりいないというのは何か変なのだろう。
そのうち、日本人の女性が外国にそうやって働きに行く時代がくるかもしれない。
膨大な借金は将来に回し、若者達は安心して働けない。
そういう国が将来そうならない保障はないのである。
彼女達のような強さが日本の若者にはあるだろうか？
ビールを飲みながら四方山話をして、美味しい肉を食べる。
スナックのママと女の子が肉を焼いてくれるので助かる。
日が傾き空の雲が茜に染まるまでバーベキューを楽しみ、
沢山買いすぎて使わなかった肉は彼女達に土産に持って帰ってもらった。
来年もいい天気でバーベキューを楽しめるといい。

Date: 2010/07/22(木)

横浜－巨人戦

顧問先の社長がチケットをくれたので、子供と横浜－巨人戦を見に行ってきた。
デイゲームなので、中華街で昼飯を食べてから行くことにする。
試合開始まで一時間程度だったので、駐車場から一番近い重慶飯店。
適当にみつくろって、春巻、上湯水餃、炒飯、杏仁豆腐を頼む。
店内はそこそこ混んでいて、中華街らしく中国語もあちこちから聞こえてくる。
春巻も上湯水餃もなかなか美味い。
ただ、美味いのは美味いのだが、無難な味というか、そんな気はする。
以前食べた萬珍楼の方が自分的には好みかな。
食事を終えてスタジアムへ。
ぎんぎらぎんに日が照っている。
席は三塁側のＳ席。
中に入るともう一杯である。
球場で野球を見るというのは初めてだったのだが、
テレビで見るのと違いやはり迫力はある。
バーチャルではない現場を見ている感じ。
それにテレビでは全くない、周囲の雰囲気というものがある。
なかなか面白いなとは思いつつ、ただ、暑い．．．。
半端でなく暑い。
巨大なフライパンのなかであさりバターになっているあさりの気持ちが分かる気がして
くるほど暑い。
団扇を仰ぎつつ試合を観戦する。
テレビで見ているのはバックネット裏あるいは一塁側からの映像なわけで、
三塁側から見ていると、かなり違った感じで見える。
なるほど視点が変わると、見えるものはかなり違うのだなと思った。
それと、観客席の間を若い売り子達がビールやつまみを売って歩いているのだが、
彼等彼女達の仕草がなかなか職人芸的なところがあり、それを見ているのも面白かった。
きびきびと働いている若者というのは見ていて気持ちのいいものだ。
試合の方は満塁策の失敗で点を献上した巨人が７－５で負けた。
終わってから中華街に戻り、お土産屋を覗き、最後に重慶飯店で餃子と中華饅頭を買って帰る。
中華街で売っている中華饅頭はやたら大きいのだが、ここのは手ごろな大きさで良い。
この餃子も中華饅もなかなか美味しかった。

Date: 2010/07/20(火)

歌人の玉城徹氏が亡くなられた。
８６歳であったそうだ。
北原白秋に師事し、教職のかたわら正岡子規や白秋を研究。
歌誌「うた」を創刊して主宰。毎日歌壇の選者を長く務めた。
歌集「われら地上に」で第１３回迢空賞を受賞している。
残念ながら氏の歌集を読んだことはない。
拾い読みで知っている歌を幾つか、

　夕かぜの寒きひびきにおもふかな伊万里の皿の藍いろの人

　きび団子受けて桃太郎に同化せし犬猿雉を疎まざらめや

　櫨もみぢさくらの紅葉朝霧にほのぼの見ゆる山にぞ対ふ

　秋雲のひかりに遠くむかひ坐て朝食のパン葡萄酒の赤

　いづこにも貧しき道がよこたはり神の遊びのごとく白梅

前衛短歌の批判者であったらしい。
すぐれた文章家でもあったらしく、詩人は孤高を保つべき、というようなことを書かれていた。
私が月に一度参加している歌会で総評をしておられる花山多佳子さんの御尊父である。
最後に、氏の歌のなかで私の好きな歌をもうひとつ。

　起きいでて椅子にゐるとき大いなる寂寥一つ来りけるかも

心よりお悔やみ申し上げます。

Date: 2010/07/14(水)

はやぶさの光芒

６月１３日夜、オーストラリアのウーメラ砂漠上空に一条の光芒が走った。
２００３年に打ち上げられ小惑星にタッチダウンし、
７年の航海を経て地球に帰還した「はやぶさ」が放った最後の光芒である。
「はやぶさ」の後継機は事業仕訳により中止になっていたが、
「はやぶさ」が日本中に感動を巻き起こすと政府は態度を変え、
予算を前向きに考えると言い出した。
しかし、その予算はどこからもって来るのだろう？
他の科学技術関係の予算を削るのだろうか？
アメリカの軍事技術は民生に転用され多くのビジネスを作り上げた。
インターネットも携帯電話もＧＰＳも、みな軍事技術からの転用である。電子レンジさえそうだ。
それらはみな新しい産業になり、アメリカの競争力を支えた。
つまり、技術には波及効果がある。
事業仕訳でスーパーコンピューターについて、
「二位じゃダメなんですか？」というギャグを放った御仁がいたが、
この発言を聞く限り、彼女は技術の波及効果に気付いていない。
スーパーコンピューターに予算がつけられ、
その仕事で培われた技術が民間の技術をアップさせ、
それが競争力につながる。
それが重要なのである。
事業仕訳は企業では以前から当たり前におこなわれている事業の棚卸し、予算のチェックで
あるが、企業ではそれぞれの分野のプロがぎりぎりまで議論して結論を出すのであり、
素人が短時間にパフォーマンスとしてやるのではない。
「はやぶさ」の帰還で周囲の雰囲気が変わるやいなや手の平を返したように、
「事業仕訳の結果がすべてではない」等々言っていたが、
それはつまり、その時その時の受けでものを言っているということではないのか。
参議院選挙が終わり、政府にとっては厳しい結果が出た。
今後、どういう政策をとっていくのか分からないが、
資源のないこの国にとって、科学技術がどんなに重要かは誰も否定できないことであるはずだ。
二位の技術は売れない。買い叩かれるだけだ。
この国の次の世代、そのまた次の世代が安心して暮らしてゆくためには、
この国に仕事がなければならない。
この国の産業に競争力がなければならない。
科学技術のような長期的な視野を持って取り組まなければならないものを、
ポピュリズムの手に委ねれば、
この国は未来を失うかもしれない。
「はやぶさ」の放った光芒が、
この国の技術の最後の光芒にならないことを祈りたい。

Date: 2010/07/13(火)

東京平日歌会

東京平日歌会、今回は２６人の出席で結構多い。
で、気になった歌をひとつ。
２６人だとかなり忙しいわけで、司会が一生懸命なのがひしひしと伝わってくる。
発言したい歌は沢山あったが、時間を考えて言いたいのを抑えるわけである。
そのなかで、言いたくて言おうとしたら総評に振られてしまって発言できなかったという歌。
例によってここには出せないが、
手首からシュシュを抜いて髪を束ねたスーツの女が・・・、そんな歌意の歌。
読んだとき、シュシュというのが分からなかったのだが、
男性には分からないだろうという司会の説明で分かった。
ゴムの入った布製の輪っかで、髪を束ねたり手首に巻いたりするらしい。
歌会での評価も高く選者の評も好意的だった。
私もいい歌だと思いつつ、ちょっと引っ掛かるところがあった。
シュシュとスーツ、ふたつの片仮名。
しかもふたつとも身につけるものである。
これが煩く感じる。
カタカナをどちらかひとつにした方がいいような気がするのだが、どうだろう？
それともうひとつ。
手首からシュシュを抜いて、それで髪を束ねる女。
それでひとつのイメージが浮かぶわけである。
それに続いての、スーツの女。
スーツの女という表現は、
働く女性の雰囲気を伝えるひとつのパターン的な言い方であるわけで、
初句から三句までで立ち上がった女性の姿を、
四句でパターン的な表現につなげてしまうのはどうなのだろう？
せっかく立ち上がった雰囲気に水を差しているような．．．。
上句で立ち上がった具体的な女性の姿、
それをスーツの女という表現にぶつけて、最後に意外性のある場を持ってくる。
それが面白いのだという評価は分かる。
あるいはそうなのかもしれない。
しかし、どうも私は、シュシュとスーツというふたつの片仮名の煩さと相俟って、
スーツの女という四句が、
せっかく良い上句で浮かんできたものを微妙にマイナスしてしまうような、
そういうかすかな引っ掛かりを感じたのである。
どうなのだろう？
初句から三句までは良い。ある種はまった言い方の四句、そしてうまい結句。
うーん．．．。
四句のはまった感じ、微妙に気にならないだろうか．．．。
その辺について発言を求めようと思ったとき、
「はい、では小林さんお願いします」
と無情にも司会が選者に振ってしまったのである（＾＾；
ま、２６人もいたら仕方ないよね（＾＾
しばらく東京平日歌会は出席者が少なかったが、今回はなぜか２６人という大人数。
時間内に終わらせなければならない司会は一生懸命なのだ。
人数が多ければ発言が限られるのは仕方ないことであり、当たり前のことである。
そういうなかで司会がうまくさばいてくれる歌会というのは気持ちのいいものである。

Date: 2010/07/10(土)

入谷朝顔市

毎年、七夕を挟んだ三日間、入谷で朝顔市が開かれる。
７月の東京平日歌会が七夕の日だったので、午前中に朝顔市に行ってみた。
上野の入谷口から１０分程歩けば言問通りに出る。
ここから入谷の鬼子母神を挟んだ数百メートルが朝顔市の会場である。
言問通りの鬼子母神の側に朝顔の露店が並び、反対側には食べ物系の露店が並んでいる。
平日だというのに凄い人出である。なかなか前に進めない。
朝顔の鉢が並べられて、威勢のよい売り子の声が響いている。
綺麗な花が並んでいるのだが、とりあえず鬼子母神にお参りしてからである。
混んでいる道をくぐり抜けるようにして鬼子母神に辿り着く。
小さな寺なのだが江戸時代から安産・子育ての神として信仰された。
「恐れいりやの鬼子母神」と駄洒落を言っていたのは蜀山人だったろうか。
ここの境内でも朝顔を売っている。
というか、もともとこの境内で朝顔を売ったのが入谷の朝顔市の始まりであるらしい。
朝顔はいいとして、鬼子母神なら柘榴があるだろうと見回してみると、
寺の入口に柘榴の木があった。
３ｃｍくらいの青い実が幾つかついている。
鬼子母神が人肉の代わりに食べたという柘榴。
赤く禍々しく熟れたら、鬼子母神に供えるのだろうか。
人で一杯の境内を出、やはり人で一杯の道を浅草方面に歩きながら朝顔を物色する。
可愛い売り子のいる店で買いたくなるのが人情だが、いまいち気にいったのがなかった。
結局、しばらく歩いてあんどん作りのオーソドックスなやつを買う。一鉢２０００円。
どういうのを選んだらいいのか店の人に聞いてみたが、
葉の多いのは葉に栄養をとられてダメなのだそうだ。
葉が少なくて蕾が沢山ついているやつがいいとか。
余計な葉はとり蔓はしっかり巻き登れるようにしてくれ、そこから新しい蕾が出るからと。
米のとぎ汁をあげるのがいいと言っていた。
やっとの思いで人混みを抜け出し、朝顔の鉢をぶらさげて言問通りを浅草へ歩く。
この辺の町並みもなかなか風情がある。
細い路地の下町のような街で生まれたせいか、東京の下町は歩いていて気分がいい。
途中から、かっぱ橋道具街に入る。
この街もなかなか面白い。
業務用のいろいろな道具を売っている店が並んでいるのだが、
昔懐かしいかき氷の道具を売っていた。手回しで氷の塊を掻いてかき氷を作るやつ。
幾らだろうと思って見たが値札がついていなかった。
ここにくれば大抵のものは売っていそうな、そういう街である。
合羽橋の交差点を浅草寺の方へ曲がると、
七夕飾りの続く商店街の向こうにスカイツリーがでんと立っている。
その先で六区を経て浅草寺の伝法院の脇に出る。
仲見世にはゆかず、そのまま南に下る。
もう昼飯の時間。この先をしばらく行ったところに鰻屋の初小川があるのだ。
行列はない。入れるかなと思って行ってみると、
「１２時から予約で満席です」という札。
．．．。
どうも縁がないな。満席だったり臨時休業だったりで、なかなかここの鰻が食えない。
路地を入り色川の方に行ってみるが、ここも相変わらずの行列である。
鰻は諦めていつもの並木藪に行く。
４月に来たときは客がすくなかったのだが、今日は混んでいる。
天ざるとビール。
やはりここで食べると、他の店の蕎麦がいまいちなのだということが分かる。
汁が美味しいし、蕎麦の喉越しがいい。
食事を終えて江戸通りを浅草橋へ歩く。
途中、蔵前に古本屋がある。
かなり年季の入った店である。
戦前か戦後間もない頃、そのくらいから建っているような店で、
のぞくと壁側の木の棚が本の重みで見事に湾曲している。
あれだけ湾曲するにはかなりの歳月が必要だろう。
壁まで積み上げられた古本は皆、日に焼けたように古色蒼然としており、
その奥に店番の老婆が店と一体化したように鎮座している。
物色してみると本阿弥書店の「新・俳句の杜」というアンソロジーがあった。
俳句はやらないのだが、なにかの参考になるかもしれない。
定価３８００円となっているが、幾らかと聞いてみると、
しばらく考えてから、１０００円でいいと言う。
そのうちまた東京平日歌会に行くときに立ち寄ってみよう、なにか掘り出し物があるかもしれぬ。
１０時半に上野から歩き始めて、入谷・浅草・蔵前と歩いて浅草橋に着いたのが１時。
東京平日歌会は歌会の前にこういう町歩きを楽しめるのがいい。

Date: 2010/07/08(木)

今月の横浜歌会は歌合（うたあわせ）をおこなった。
歌合というのは平安時代からおこなわれてきたものであるが、
互いに歌を出し合い、それを批評して歌の優劣を競うものである。
批評力向上という目的から試みに実施してみたわけだが、
紅組・白組に別れ、それぞれ３人ずつ計６人が参加。
他の人達は判者として優劣を判定する。
本来の歌合は歌の優劣を競うわけだが、
批評力向上という趣旨から歌ではなく批評の優劣を競うという形でおこなった。
相手方紅組３人は前日に会合し、しっかりと打ち合わせをきたということで、
歌合がスタートすると、発言の順番も発言の内容もしっかり分担されていて実に見事であった。
それに対し、私が属した白組。
一応打ち合わせのために集まったのだが、たいした打ち合わせをするわけでもなく、
言いたいこと言えばいいという程度のことで、結局はそのまま飲みに言ってしまい、
ほとんどぶっつけ本番（＾＾；
３人ずつなので、一回戦、二回戦、三回戦とやっていくわけだが、
紅組の緻密さに対し、それでもぶっつけ本番の白組良く善戦し、
一回戦・二回戦ともに白組が制し、最後の三回戦。
紅組が白組の歌の弱点を集中的に突いてきて、それに対し白組のメンバー二人は必死の応戦。
その脇で私はニヤニヤしながら聞いていた。
なぜならその歌は私の歌で、
既に一回戦・二回戦で私は役目を終えたと勝手に思っている（＾＾；；
打ち合わせのとき、歌の瑕を指摘されたならば必要以上に反応しないで、
相手の歌の問題点を攻めるよう話したのだが、
エキサイトしたお二人さん、相手の攻撃にしっかり反応してしまい、結局、三回戦は白組の負け。
だいたいもって、サッカーでもゴール前まで攻められて好セーブを連発したとしても、
観衆には、試合を支配しているのは攻めている方としか見えないのである。
大抵の歌には瑕がある。
そこを攻められた時はさらりと受け流しカウンター攻撃に移らなければ判者にはアピールしない。
エキサイトして相手の土俵に立ってはいけないのである。
いずれにせよ、全体としては二勝一敗で白組の勝ちであった。
で、結果はどうでもいいのである。
批評力向上という目的で今後も歌合を実施するらしいので、幾つか気になったことを書いておく。
まず、批評の優劣で判定するというのは難しいということ。
本来の歌合は歌の優劣を競う。
参加者がそれぞれの陣営の歌を批評して、その長所を説くわけだが、
判定はあくまでも歌の優劣である。
批評の出来不出来は歌の優劣の判定に反映されるわけである。
今回は歌ではなく批評の優劣を競ったわけだが、
通常の歌会では注意しなければならない「批評を批評する」ということにつながりそうなところが
あって、正直言って私には抵抗があった。
やはり、歌の優劣を競った方がいい気がする。
もうひとつは実施前に歌合の遣り方についての共通認識を持っておくことの大切さである。
今回、紅組と白組の姿勢はかなり違った。
紅組は緻密で、言うならば「勝ちを取りにきた」。
それに対し白組は、自分の思った通りに批評して歌合を楽しめばいい、というラフな姿勢。
私がそれをはっきりと感じたのは、私のコメントに対し紅組のひとりが、
「今の関野さんの説明は説明になっていません」と言ったときである。
私はその発言に、かなりの違和感を感じた。
私はそのとき、相手のコメントに対し否定的な意見を述べていたわけだが、
私の中ではそれは意見の応酬であって、相手の質問に対して説明したわけではないのである。
判者への戦術的アピールは分かるが、
私が歌会で嫌っている「批評を批評する」に近いものに感じられ、
そこまでせんでもいいだろうに、という気持ちがしたわけである。
そしてもうひとつ、姿勢そのものに違和感を感じた。
我々は仕事で問題の本質を見極めその解決点を探るために、
ディベートをすることがあるわけだが、
そのとき、ディベートに勝つことに気がいってしまって、
問題の本質を見極めその解決点を探るという目的を見失えば、
それは本末転倒なわけである。
それに近いものを感じた。
歌についての批評を深めるために話しているのではなく、勝つために話している。
そういう違和感である。
この違和感は三回戦に進むに従ってさらに強く感じられた。
いずれにせよ、歌合で勝つことに重点を置けば、
歌会では慎むべき「批評を批評する」ことにつながりかねず、
本来あるべき歌の論から外れる危険もあるということであろう。
今回も、両者が熱を帯びるにしたがって、歌の批評ではなく批評の批評をしているような嫌な
展開が部分的にあったことは確かであり、
歌合に臨む姿勢、あるいはルール、そういうものについて、
最初にある程度の合意が必要だった気がする。
以前、他の人から聞いた「歌合は面白いけど、人間関係がねえ～」と言う言葉の意味が、
実際にやってみて何となく分かった気がする。
その辺についてしっかりとした共通認識を持ち、
自らもしっかり自覚しているメンバーでやらなければ、
「歌合は面白いけど、人間関係がねえ～」
その言葉の通りになるかもしれない。
ま、問題はあるにせよ、確かに歌合は面白かった。
次にやるときも楽しんでやるようにしたい。
歌合も歌会も主役は歌である。
そこでどういう良い歌を読めるか、どういう良い批評を聞けるか、が大切なのであって、
勝つことを目的にする必要などない。

Date: 2010/07/06(火)

顔を覚える

昨日、町を歩いていてふと思い出した。
事務所の賃貸借契約の更新があった。
契約書は持っていなかったが印鑑はあったのでそのまま不動産屋に行ってみた。
「書類置いて来ちゃったんだけど、契約の更新出来る？」と聞いてみると、こちらが名乗る前に、
「ああ、先生」と社長の返事。
！？
会ったのは二年前のはずで、それ以降は一度も会ってないのだが私の顔を覚えていた。
ちょっと驚いた。
一度会った客の顔は覚えているということか。
そう言えば、以前顧問先の社長に連れられて行ったスナックのママ。
その社長さんの話によれば、そのママは、一度来た客の顔と名前は全部覚えているという。
一度来ただけの客が何年振りかで再び店に顔を出すと、
「まあ、○○さん、おひさしぶり」と迎えるのだそうだ。
相手が自分の顔と名前を覚えていると知った瞬間、
その客のその店に対する評価は変わるはずだ。
ひとつの才能なのかもしれないが、
仕事のプロの姿でもある。
社会のあちこちで質の低下が目につく昨今、
こういう仕事のプロの姿を目にするのは気持ちがいい。
で、私は．．．。
何年か前に単発で仕事を頼まれた客の顔を覚えているかと自問してみると、
これが怪しいのである．．．（＾＾；

Date: 2010/07/02(金)

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