成年後見の研修会に出席。
講師は、成年後見では当会よりも先行している東京会の支援タンターの相談員の先生に
お願いしたのだが、相談実務についていろいろ聞けて有意義だった。
ただ、研修会のなかで、税理士の資格を持っていない後見人が被後見人の税務申告を
した場合、それが税理士法違反になるかどうかについてディスカッションがおこなわれ
たのだが、その辺はちょっと理論が整理されていないような印象を受けた。
その辺の論文を日税研にも発表している先生で、業として行っているかどうかに着目して
税理士法違反であるか否かを考察しているようだったが、どうも私は法定後見については前提
に問題がある気がして、その辺を質問したのだが、「まず代理があるんです」という答えで、
いまひとつ納得できるものがなかった。
で、いろいろ調べてみた。
成年後見は大きくふたつに分かれる。
法定後見と任意後見である。
法定後見の根拠条文は「民法」であり、
任意後見の根拠条文は「任意後見契約に関する法律」である。
法定後見における被後見人の財産管理について定めているのは民法８５９条である。
「後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について、
被後見人を代表する」
そう規定している。
後見人が被後見人の税務申告をする場合は、この条文が根拠になるわけだが、
法の規定は「被後見人を代表する」である。
法律の解説書などでは、後見人は「包括的な代理権」を持っている等、書かれている
のだが、こと財産管理に関する限り、法の規定は「被後見人を代表する」であって、
「代理する」でもないし「代理権を有する」でもない。
法律行為における「代理」とは、
本人のために第三者と法律行為をし、その法律効果は直接に本人と第三者の間に生ずる
ことであり、一方、「代表」とは、
法人・団体に代わって意思を他に表示し、それを法人・団体自身の行為として法律上の
効果を発生させることである。
代表取締役と会社の関係を考えれば分かりやすいかもしれない。
代表取締役は会社を代表し法律行為をする。
それは会社を代理しているのではなく、会社自身の行為として扱われる。
代表取締役が税理士に頼まず自分で会社の税務申告をしたとしても、
それは会社自身の行為であって、代理は存在していない。ゆえに税理士法違反にならない。
法定後見については、財産管理の根拠条文が「被後見人を代表する」となっている以上、
これと同じことなのではないだろうか？
後見人は被後見人を代表して、被後見人自身の行為として税務申告をするのではないか？
そうである以上、代理を前提とした税理士法は関係ないのではないか？
任意後見については話が違う。
任意後見はその根拠条文のなかで「代理」であることを明示しており、
民法の委任の規定を使って後見事務をおこなうものである。
である以上、特別法は一般法に優先するという法の原則により、
特別法である弁護士法や税理士法の制約を受けるはずである。
従って、任意後見では研修会で話が出た通り、業としておこなわれていれば、
税理士法違反という話になるのではないか？
どうも研修を聞いていて、法定後見と任意後見のその辺の違いが整理されていないような、そんな気がしたのである。
もちろん、これは法を読んだうえでの私の個人的考察である。
もし、このブログを読んだ方からの御意見を伺えれば幸いである。
いずれにしろ、この辺の問題というのは成年後見の制度を作ったときの法の不備の
問題もありそうな気がして、試行錯誤を繰り返しながら改正されていくのかもしれない。
ただ、その改正の過程で弁護士会や司法書士会と同じように税理士会も意見が言える
ようになっていなければならないわけで、その辺を考えると税理士会の現状は少し
お寒いのかもしれない。
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Date: 2012/11/21(水)
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